研究概要 |
茨城高専の学生359名(4年生180名、1年生179名)を対象に、予備調査を経て完成した読解阻害要因に関する5段階尺度形式のアンケート調査を実施し、その結果を「1:全くあてはまらない〜5:とてもよく当てはまる」の中で1点から5点までの間で得点化を行い、因子分析と分散分析を行った。 因子分析の結果、『情報統合能力因子』『スキーマ活用能力因子』『ボトムアップ処理能力因子』『動機付け因子』の因子が抽出され、各因子の標準因子得点に基づく分散分析の結果、『情報統合能力因子』の標準因子得点においては、1年生と4年生の間に有意差が見られ、1年生の得点の平均は4年生の得点の平均よりも有意に大きかった(F_<(1、57)>=14.43,ρ<.01)。すなわち、英語の論説文読解の際に、1年生の方が4年生よりも、より強く情報統合に関わる諸作業に困難を感じていると言える。 一方、『スキーマ活用能力因子』の標準因子得点においても1年生と4年生の間に有意差が見られたが、4年生の得点の平均の方が1年生の得点の平均よりも有意に大きかった(F_<(1、357)>=8.83,ρ<.01)。このことから、4年生の方が1年生よりも論説文読解の際にトピックに関わる背景知識の不足や背景知識の利用能力の欠如といった問題をより強く感じていることが示されている。 『ボトムアップ処理能力因子』に関しては1年生と4年生の間に優位傾向が見られ(F_<(1、357)>=2.81,ρ<.10)、4年生の標準因子得点の平均値:の方が1年生のそれよりも高いことから、4年生の方がボトムアップ処理、つまり、「文法知識」と「多義的な語彙の意味の把握」において困難をより強く感じていることが推察される。 『動機付け因子』に関しても1年生と4年生の間に優位傾向が見られた(F_<(1、357)>=3.50,ρ<.10)。1年生の標準因子得点の平均値の方が4年生のそれより高く、興味・関心の欠如といった側面において1年生のほうが4年生よりもより強く困難を自覚していることが示唆されている。
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