研究課題
基盤研究(C)
アジア・太平洋戦争期に、約4万人の中国人が、日本各地の135の事業場に強制連行され、強制労働を強いられた事実、また約7000人の中国人が、過酷な労働と処遇のために異郷で死亡した事実に関する調査研究は、日本近現代史のなかでもなお十分に進められているとはいえない。その史実を明らかにするためには、緊急性を有する生存者・遺族の聞き取り調査をすすめること、関連資料の調査分析をすすめることが必要な課題である。本研究では、以下の具体的課題を果たした。1.中国(山東省青島市・済南市、河北省石家庄市、河南省原陽県)を訪問し、生存者・遺族から貴重な証言を得た。とくに平成16年12月に中国で面談した生存者が、平成17年10月にかつての労働の場である大阪港を60年ぶりに再訪する場に立会い、中国および日本の双方の地で直接に実態を聞くことができた。2.日本各地で土木建築業、港湾荷役業、炭鉱業、造船業などの労働現場について調査を行った。また連行された中国人の最初の上陸地のひとつである山口県下関市では、「門司検疫所彦島措置場」跡地を確かめ、連行の痕跡をたどる作業をすすめた。中国および日本各地での調査の過程で、両国の研究者と意見交換をし、知見を高めた。3.外務省および厚生省が所蔵していた関係文書を、情報公開条例にもとづき収集にあたった。それらは膨大なものであり、なお分析が必要であるが、中国人強制連行問題は、戦争の終結とともに解消したものではなく、戦後長期にわたって資料が隠蔽され続け、また遺骨の送還問題などを通じて、日中関係にとって大きな課題であり続けてきたことを明らかにした。また戦後直後に関係企業に支払われた国家補償金の算定基準には不正があることを実証し、さらにその補償金は一度は全額を国庫に収める形をとりながら例外規定によって支払われるに至った法的措置を歴史的に検証した。
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岩波講座 アジア・太平洋戦争 4 帝国の戦争経験(倉沢愛子, 杉原達ほか編)
Asiaa Pacific Wars(A.Kurasawa, T.Sugihara et al., eds.) vol.4
帝国への新たな視座--歴史研究の地平から(歴史学研究会編)
ページ: 67-103
An new standpoint to the study of the Empire(Rekishigaku Kenkyukai ed.)
帝国の戦争経験(倉沢愛子, 杉原達ほか編)
広島高等裁判所第二部に提出した意見書
ページ: 1-25
40016567106
歴史学研究 776号
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『戦死者のゆくえ--語りと表象から』(川村邦光編
ページ: 252-258
A professional opinion presented to the Hiroshima High Court
Rekishigaku Kenkyu No.776
Whereabouts of war dead(K.Kawamura, ed.)
ページ: 252-255