研究課題
基盤研究(C)
本研究は、地中海世界に見られるイスラーム的様相を明らかにしつつ地中海世界のイスラーム世界としての性格を突き止めることを目的としている。16世紀には地中海の海岸線の四分の三がイスラーム世界に取り込まれており、その事実をもってしても、地中海世界がイスラーム的性格を内包することは十分に予想されるのであるが、地中海世界をイスラーム世界として積極的に捉えなおす研究は従来必ずしも多くはなかった。本研究は、オスマン朝を中心に据えつつ16世紀に至るまでの地中海世界の歴史を再検討することによって、従来ヨーロッパ史の観点から一方的に扱われることの多かった地中海世界史をイスラーム史の観点から捉え直そうとするものである。設定された課題の解明のために、研究の基盤的作業としてイスラーム世界とヨーロッパ世界あるいはその他の世界に残された広範な史料の比較・分析を行なった。さらに、その成果を踏まえ、地中海世界に見られるイスラーム的要素を具体的に抽出・分析し、地中海世界が有しているイスラーム世界として性格を検討した。その結果、文化的空間としての地中海世界が人々の営みの内実においてイスラーム文化やイスラーム社会のあり方に強く影響されていることが確かめられ、とりわけ地中海航海案内書、就中イスラーム教徒の手になる地中海航海案内書の分析を通じて、地中海世界のイスラーム世界としての性格が具体的に確認された。ただ、本研究において設定された課題は、その発展の可能性に鑑みて、与えられた期間内に十二分に解明されたとは言えず、今後のさらなる展開の余地を残していると考えている。報告書において関連文献に現れる地中海世界のイスラーム的様相を具体的に提示し、今後のより総合的で詳細な考究のよすがとしたい。
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大学で学ぶ西洋史 2 近現代 (単行本)(印刷中)
An European History for Students, the Modern Period, Kyoto (eds. UEGAKI Y., KOYAMA S., SUGIMOTO Y., YAMADA Sh.) Vol.2(in print)
ノモス 15
ページ: 101-106
Nomos, Institute of Legal Studies, Kansai University 15
歴史としてのヨーロッパ・アイデンティティ(谷川稔編) (単行本)
European Identity in History, Tokyo (ed. TANIGAWA Minoru)
ページ: 152-168