研究課題
基盤研究(C)
本研究は、中世後期イングランドにおける宗教社会的結合関係の具体的諸相とその特質を明らかにすることをその目的とし、さまざまな宗教社会的ネットワークの存在に着目することで、中世後期イングランド社会をささえ維持した仕組みを明らかにし、これまでの研究上の空白を埋めることを目指した。具体的には、中世後期に多く現れる、免罪符(贖宥状)史料を用いて、そこに見られる修道院やフラタニティを世俗から支えた宗教社会的ネットワークの存在とその特質を明らかにした。本研究課題の成果は、2003〜5年、リーズ国際中世会議(International Medieval Congress, University of Leeds)での3回の口頭報告、2005年の拙著『ジェントリから見た中世後期イギリス社会』(刀水書房)、第8章「ジェントリと贖宥状」及び英文付録4&5に結実している。一昨年度はプランプトン家と贖宥状を例に取り、地域政治社会と贖宥状の関係を分析し、その結果、イングランド北部地域社会の中で、修道院とその周辺の有力ジェントリが、贖宥状を利用し作り上げた社会的ネットワークの一端を明らかにした。昨年度は、ロンドンの富裕商人家系出身でエセクスのジェントリ家系に嫁いだキャサリン・ラングレイ(旧姓アーズウィック)の10通の贖宥状を分析し、贖宥状の主に宗教社会的側面を明らかにした。さいごに、今年度は、1412年、ペラムとフィッツヒューの受け取った贖宥状をテーマとし、中央政治と贖宥状の関係を分析した。国王ヘンリ4世およびヘンリ5世の宮廷官僚として活躍した、ジェントリのサー・ジョン・ペラムと、北部貴族のサー・ヘンリ・フィッツヒューが、1412年、国王ヘンリ4世の病気が進行するなかで受け取ったそれぞれの贖宥状を比較しつつ、中央政界の動きと、贖宥状に見られる宗教社会的ネットワークを関連させつつ考察することが出来た。
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The International Medieval Congress, University of Leeds, read on the 12th July,2005.
史学雑誌 114-5
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史料が語る中世ヨーロッパ(國方敬司、直江眞一編)(刀水書房)
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比較家族史研究 17
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International Medieval Congress, University of Leeds, read on the 13th July,2004.
in Manuscripts, Documents and Medieval History of Europe (in Japanese)(ed. by Keiji Kunikata and Shin-ichi Naoe)(Tosui Shobo, Tokyo)
What Do the ‘Medieval Documents' Reflect II Summarized Proceedings of the Session 1009, the International Medieval Congress, Leeds, 2003, (ed. by Richard Barrie Dobson and Hirokazu Tsurushima)(Kumamoto University)
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The International Medieval Congress, University of Leeds, read on the 16th July,2003.
What Do the ‘Medieval Documents' Reflect II : Summarized Proceedings of the Session 1009,the International Medieval Congress, Leeds,2003 (ed.by Rechard Barrie Dobson and Hirokazu Tsurushima)(Kumamoto University)
The International Medieval Congress, Univ.of Leeds,13 July,2004.