研究課題
基盤研究(C)
英領植民地とされて以来、急速に人口が増えることになったシンガポールにおいては、人はいつも大事な労働力であり、貴重な国力の担い手であった。そのため、時には大量に移民を受け入れ、その源を形成してきたのであり、その「人の力」こそがこの国の殆ど唯一の資源である。では、その貴重な国力の担い手である「人」を、この国はどのように扱ってきたのであろうか。教育、人権、労働、政治、経済さまざまな尺度でその「人」の取り扱いを見ることはできるが、本研究では海外からの労働者、なかでも女性労働者をどのように扱ってきたのか、とくに20世紀前半の女性移民労働者に着目することで検討する。そこで、まずシンガポールが歴史的にどのような変遷のもとで移民労働者を必要としてきたのか、その点を明らかにしたうえで、さらに文化人類学的な見地から、20世紀初頭にシンガポールに来た女性移民労働者に注目する。また女性移民労働者のその後の経緯を追うことで、現在に至るまでを俯瞰し、ひいては国家と個人、国民との関係を視野に入れた女性労働者と人口移動について考えることにする。さらに20世紀後半からの外国人移民についても検討を行う。シンガポールは歴史的な変遷のなかでどのような国家を形成し、どのような人口構成により労働力を活用してきたのであろうか、そしてその過程で移民労働者をどのように使ってきたのであろうか、それらについて詳細に検討することで、国民というカテゴリーの中に入る人とその外に出される人というのがなぜ出てくるのか、考えることにしたい。(648字)
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田中雅一・松田素二編『ミクロ人類学の実践:エージェンシー/ネットワーク/身体』世界思想社
ページ: 316-350
ranaka, Masakazu and Motoji Matsuda eds.the Practice of Micro Anthropology : Agency Network, Body, Japan : Sekaishiso-sha.