研究課題
基盤研究(C)
平成15、16の両年度を通じた成果の第一として、本研究の分析枠組みの基礎をなすフォークロリズムとフェイクロアの概念について、おもに北米を中心とする研究史を展望し、両概念がパブリック・セクター・フォークロアの発展を理解する上で、重要な意義をもつことを明らかにしえた。とくにフォークロリズムが、民俗文化の客体化と担い手によるその流用という、両側面の営みを現象の上で規定できる概念として、きわめて有効であることを指摘しえたと考えている。成果の第二として、各地の民俗芸能を一堂に集めて上演する大規模イベントとして、いわゆる「おまつり法」を背景に地域伝統芸能センターと都道府県が協力して実施する「全国フェスティバル」を取り上げ、その動向を広島大会(平成15年10月)と茨城大会(平成16年10月)における参与観察を通じて把握することができた。第三には、全国フェスティバルに対して、ローカルな規模で実施される民俗芸能上演イベントである「北上みちのく芸能祭り」を比較することによって、臨時に立ち上げられた部門による遂行が毎年繰り返される全国フェスティバルのはらむ問題点を析出することができた。最後に第四として、大規模イベントに主演する側である個別の民俗芸能についても、いわゆる伝統的な無形民俗文化財から、近年の創作による和太鼓グループまでの多様な出演団体の実態を数量的に把握するとともに、事例として選択した「八ツ鹿踊り」(愛媛県宇和島市)や「まんのう太鼓」(香川県満濃町)などの民俗芸能集団への聴き取り調査を通じて、民俗文化の担い手が地域文化の再編過程に自覚的に作用する状況を明らかにすることができた。
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日本民俗学 236号
ページ: 20-48
Nihon-Minzokugaku, Bulletin of the Folklore Society of Japan No.236