研究課題
基盤研究(C)
本研究は、これまで近代国際法において所与の前提とされていた<外国人はその身体・財産について保護をうける>という観念を、その法的存在の形態に即して具体的に分析しようとするものである。そのため、このような観念の下敷きとなっている通商諸条約の定型的規定(本研究代表者はこれを「完全な保護」フォーミュラと称している)のルーツである1826年のイギリス・メキシコ間の通商条約の条項について、その背景および交渉過程を分析した。その結果、この条約は、上記観念を記述した国際法教科書の背景となっている実行の端緒であるにもかかわらず、その当時においては、きわめて限定的な意味しか与えられておらず、また、一般国際法の反映ともそれになるべき「あるべき法」とも捉えられていなかったことが明らかにされた。したがって、逆にいえば、上記観念は、むしろその後に、(1)「完全な保護」フォーミュラが19世紀中の通商条約に繰り返し登場する、(2)そうした実行をうけて、教科書的記述のなかに、上記観念が取り込まれる、という過程をたどって一般国際法(の前提的観念)として受容されるに至ったのである。本研究代表者は、さらに、(1)、(2)の過程を分析すべく、研究を継続した。(1)については、資料の調査につとめたが、イギリス、アメリカ公文書館での調査にもかかわらず、交渉過程の原資料については、その存在すら確認できないものもあり、みるべき資料は十分に収集できていない。(2)については、19世紀の国際法の文献を多く収集し、ある程度の展望はみえてきたものの、まだ成果を記述する段階には至っていない。今後も、こうした研究を継続していきたいと考えている。
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