研究課題
基盤研究(C)
本研究は、紛争処理分野におけるコミュニケーションの研究という目的の下に、調停技法の研究、技法トレーニング方法の開発、そしてそれらの基本となる調停理論の構築という3種類の活動が計画された。理論研究としては、まず、米国の先行文献を学ぶことから開始され、その中から特に重要と思われた6論文を和訳し発表した。文献研究を通じて研究者は、紛争解決には大きく交換概念を土台とする方法と、当事者の関係性と承認概念に基づく方法とがあることを理解した。そこで、紛争解決プロセスにおける交換と承認の役割に関する理論構築を目指し、研究を進めたのだが、それは、その二理論が実際の紛争解決においてどのような役割を担っているのかという点まで発展した。その結果、対話による紛争解決において最も理想的なコミュニケーション形態とは、交換理論をもとに承認理論を重ね合わせるタイプの形態であることを突き止めた。それらは、小論文「分配から承認、そして再度統合へ:紛争解決プロセスの重層性について」の中で論じられている。しかしながら、交換と承認から紛争解決プロセスを論じることは、それ自体いまだ研究の初期的段階にあり、今後はこの点をさらに深めつつ研究を進めていきたいと考えている。対話型紛争解決方法とは調停による解決を意味している。そのため本研究における技法開発は、調停技法を教えるためのトレーニング方法の開発という形で実践された。研究者は、まず調停トレーニングの全工程を7段階に分け、段階別に解説と具体的なトレーニング方法を開発し、トレーニングで使われる技法練習用資料とロールプレイ用のスクリプトの執筆も行った。その数はロールプレイのスクリプトだけで20を数える。スクリプトや練習資料は、内容別とレベル別で分けられ、受講者が使い分けできるように工夫されている。研究者は、スクリプトのひとつを使ってロールプレイを実施し、デモビデオを制作した。現在ビデオは、法科大学院、ゼミ、その他の調停トレーニングで利用されているが、その有用性は非常に高いと考えている。学生はビデオと同じスクリプトを使って自らロールプレイを行い、その事件が抱える問題点や調停の難しさを実体験する。その後ビデオを鑑賞し、そのような問題点や困難がどのように扱われ、解決されているのかを実際に見、理解することができるのである。さらに、研究の最終年度では調停トレーニング上級編の試験的実施も行った。すでに過去2年間の活動でトレーニングは完成され、手引書とデモビデオも一つ制作されている。だが、学外調停トレーニングは再度受講を希望する声が強く、上級編の必要性が感じられた。そこでこれまでのトレーニングを基礎編と位置づけ、新たに応用編を用意することとし、その準備に取り掛かった。基礎編参加者から応用編の内容についてアンケートをとり、それに従って、試験的プログラムを作成し実施したのである。今後は、(1)更なる改善を目指し、(2)また、実務家向け短期間の応用編を学生向けの長期間のトレーニングとしてどのように拡充させていくのかについて考えたい。
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