研究概要 |
1 本研究では,人体の医的利用に関わる実態を把握した上で,(1)インフォームド・コンセント(IC),(2)倫理委員会,(3)研究資源バンクやバイオバンク,(4)個人情報保護,(5)組織・細胞等に対して認められるべき財産権・知的財産権,(6)移植用臓器・組織の提供のあり方,について検討した。 2 (1)ICに関しては,説明・説明文書は詳細になることが多いが,患者にとってその内容の理解は容易でないし,必ずしも関心の強くない問題について理解が求められることになり倫理的問題をはらむ。また,研究の場合,細目は未確定のことが多く,バンクの場合は,その特質から研究内容の具体的特定はむつかしい。これは,確定された事項に対する同意というICの観念に反する。(2)〜(5)に関しては,平成16年12月に全部改正された倫理指針に照らして他のプロジェクトにおいて関与したモニタリングの経験を踏まえて検討した。ICに関しては,指針の想定する研究協力者と現場の実態の乖離に対応する必要性が痛感され,ICの要件が有効に機能しない場面において,それに代わる正当性の保障枠組の必要性が明らかになりつつあるが,具体的なあり方については依然模索中である。バンクのあり方に関しては,個人情報保護の点で一方的匿名化の方法が有効に機能するが,匿名化による研究の質の低下が生じないようにするために,人的物的資源が追加される必要性が高いことが明確になった。倫理委員会については,種々の問題点の把握を踏まえた提言を行った。また,中央委員会を求める声が強いが,最終的な信頼性を求めるべきよりどころの点で,それに危険が伴うことも否定できない。人体や臓器,組織等に対する財産権に関しては,不十分なものだが,特許権に関する研究の手掛りを得ることができたので,今後の研究につなげたい。(6)については,それを対象とする数編の論稿を発表した。
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