研究課題
基盤研究(C)
本報告書は、まず前半で、クローンベビーの規制、特に2002年来の国連での禁止条約をめぐる動きを調査した。結果からいえば、国際社会は「クローンベビーは望ましくない」と同意していたにもかかわらず、その出生を、早い時期に条約で禁止することには失敗した。この影響は、クローンベビー問題にとどまらない。これと並び、21世紀社会への挑戦となるであろう問題に「デザイナーチャイルド」がある。本稿ではこれを、「ヒト精子・卵子・受精卵の染色体上の遺伝子操作、いわゆるgermline engineeringを経て出生した子」に限定して論じた。クローン禁止条約策定の失敗は、21世紀へのインパクトがより大きい「デザイナーチャイルド」の国際規制の合意形成にも、暗雲をもたらしかねない。本報告書の後半は、クローンベビーと対比しつつ、日本ではあまり論じられなかったデザイナーチャイルドの危険性や「魅力」、誕生への賛否を検討し、国内外での規制が必要であることを示した上で、我々が現時点でできることは何か、解決策を提示した。具体的には、政府・総合科学技術会議が2005年5月にデザイナーチャイルドの是非について専門家を招いた上で議論を開始したことをふまえ、ヒトクローン技術等規正法の附則の下で、「ヒト受精胚の人の生命の萌芽としての取扱い[…]に関する総合科学技術会議における検討の結果を踏まえ[…]必要な措置を講ずる」内容として、デザイナーチャイルドの問題も含みうることを提案する。また、新たな科学技術の発展に、社会や法制度の設備が追いつかないという現状こそが、危急の問題であり、問題の解決に特化した体制が、行政・研究機関を問わず、分野横断的・学際的にに採られること、そこでは新たな問題を常に探求し、早く発見し、徹底的に議論し、解決策のストックをもっておくことが最も効果的であると結論づけた。
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法社会学 62号
ページ: 41-53
法学志林 101巻1号
ページ: 1-30
Bioethics : Frontiers and New Challenges," presented and distributed at The Fulbright Brainstorms 2003 : Lisbon, Portugal, Saturday, February 8th, 2003 (Session 5: Human Cloning/Stem Cell Utilization)(Arthur Caplin, ed.) (in press)
法律時報 75・9
ページ: 66-69
ページ: 80-82
法学志林 101・1