90年代以降、多くの国・国際機関・NGOが民主化支援に取り組むようになり、民主化支援は援助の主要な目標の一つとなった。本研究は、民主化支援が国家のみでなく国際機関・NGOによって、幅広く行われている点に着目すし、ドナー国・国際機関・NGOの民主化支援の取り組みの実態とその背景を分析した。海外出張などによる聞き取り調査・資料収集等によって得られた現時点での知見を述べると以下の2つを挙げることができる。一つは、民主化支援が自由選挙実施後などのポスト民主化の段階に入ると、中心となるのは国家機構の整備(政府、国会、裁判所など)を行うガバナンス支援となる。民主化支援の観点からは、いかにして民主化の方向をガバナンス支援の中にインプットするかが課題となる。特に重要なのは、政治システム全体の中での政府、国会、裁判所の位置づけをそれぞれ明らかにして(政治システムが大統領制なのか議院内閣制なのかに応じて)、国家機構の整備がいかに政治の一層の民主化と整合的に行えるかを、支援全体の見取り図の中で検討することである。第二に、紛争の予防・復興を課題とする平和構築においても、民主化の視点が重要となっている。一方では、民主化支援を含めた開発援助において、紛争予防・解決の視点をいかに取り入れるかが課題となっている。他方、民主化支援の視点を平和構築(特に紛争後社会の復興において)にどのように生かしていくかが求められている。この面で多くの活動を行っているEU(欧州連合)およびUNDP(国連開発計画)においては、組織的に紛争への対処を行う部局と開発援助担当の部局の間の調整が課題として残っており、組織論の視点からの分析も重要である。
|