研究課題
基盤研究(C)
わが国の人口高齢化を念頭に、公的年金制度に加えて公的医療保険制度を通した将来の負担を経済学的に分析した。具体的には今まで行われてきた一般均衡多世代重複モデル(シミュレーション)分析に公的医療保険制度をも組み入れ、将来負担がどのようになるかを、通常の経済的負担(租税負担率や社会保障負担率、さらに国民負担率)に加えて効用レベルによる比較、すなわち厚生分析を行うことによって異なった世代間の分配の問題を考察した。また世代間の負担を考察する場合、わが国の歴史的経緯を考慮したならば特に公債負担(財政赤字)と社会資本をも同時に考察の対象にしなければならない。そこで当該研究ではこれらの効果も組み入れ、国民医療費の将来予測に加えて包括的な将来負担を計測した。また公的医療保険制度を通した国民医療費の増加の要因を二つに分けたのも大きな特徴である。すなわち、人口の高齢化に伴う医療費増加に加えて、過去のデータから計算された医療技術進展の効果をも将来国民医療費の計測に組み入れた点である。これらの二つの効果を組み入れた結果、将来の国民医療費の増加を従来の単なる計測から厳密な経済モデルの中で考察することができるようになった。一般均衡分析であるので、この医療費増加の効果をも考慮に入れた合理的な分析になっている。医療費負担などの軽減させるために公債などの発行により財源を確保した場合、一時的には厚生は上昇するものの、長期的には逆に厚生水準は低下する。これは将来に先送りされる負担、さらに累増された公債のための利払いのために国民の負担が上昇するからである。したがって、公債残高は残せば残すほど、先送りすればするほど国民の厚生は低下する。また、将来の国民医療費は当該研究でも約2-3%の上昇が予想される。将来人口の低下によるGDPの低下はこの事実とあいまって将来的な国民医療の負担は大きく上昇すると考えられる。
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CRR Working Paper Series A No.A-5
ページ: 1-55
CRR Working Paper Series A-5,Center for Risk Research, Faculty of Economics, Shiga University
CRR Working Paper Series A 近刊
120006332456