研究課題
基盤研究(C)
本研究では、海外直接投資の主体である多国籍企業の立地選択に関して理論的・実証的に研究を行った。多国籍企業の立地選択に関する理論・計量モデル構築に際しては、90年代、盛んに研究が行われるようになった空間経済学の概念を取り入れた。実証研究では、日本企業の直接投資データ、並びに、タイ、中国、マレーシアにおける地域別直接投資データや企業所有別ミクロデータを用いて、多国籍企業の立地選択について分析を行った。日本企業の直接投資であるが、90年代以降、ヨーロッパやアジアへの投資が増加し、分散力学は確かに働いてはいるが、アメリカ、アジア、ヨーロッパ三地域とも、かなりある一部の国に集積する傾向にあり、全体的には、分散より集積・集中傾向が強く見られることがわかった。次に、何故、直接投資において分散より集中する傾向が見られるのかを明らかにするために、特にグローバル化が著しく進展した日本の電子・電機産業の企業立地選択要因を実証的に探った。技術進歩が著しい本産業においては、もはや、ただ単に低賃金労働者が存在するというだけでは企業誘致に成功しない可能性が高く、それよりも、比較的発展した都市部に集中する熟練労働者の存在やある程度の産業集積度がそもそも必要であることが明らかとなった。つまり、少なくとも日本の直接投資は分散するより集積する力学の方が強いことが明らかとなった。途上国の地域開発についても、同様の傾向にあることがわかった。中国、タイ、どちらの国においても、投資の地域分散要因とされる低賃金労働者の存在は、実はあまり企業の立地選択の際の重要な決定要因となっていないばかりか、地場系企業よりも外資系企業がある一定地域に集中・集積する傾向が更により一層強いのである。マレーシアでも、しかりである。すなわち、地域開発において、ある一定地域に集積する傾向が強い外資系企業が重要な担い手となる可能性はきわめて少ないことが明らかとなった。
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Foreign Investment in Developing Countries、Palgrave Macmillan, UK. (発表予定)
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