研究概要 |
本研究は、国が運営してきた事業を国営化,そして民営化を実施するという過程において現れうる有効性および問題点について,実証的側面ならびに理論的側面から明らかにすることを主たる目的としている。 まず,前者の実証的側面からのアプローチについては,研究代表者(竹内)が本報告第1章「民営化の功罪」において,民営化の進め方を類型化し,民営化の正・負の側面について論及している。それを踏まえて研究分担者(森田)および研究分担者(柳原)が,それぞれ本報告書第2章「イギリスにおける民営化の現状とその考察」および第3章「ニュージーランドのマクロ経済環境と郵便事業の国営化」において,現実的に民営化がもたらした影響を整理し,問題提起を行っている。また,研究分担者(森田)および研究協力者(佐野)による第4章「財政再建策がもたらす影響に関する定量的分析」では,財政再建の諸政策が国民の経済厚生に与える影響についてシミュレーション分析を行い,国家事業の民営化が国民経済に及ぼす影響についての分析を行う土台を提供している。同様に,第7章において研究代表者(竹内)が「地方自治体の歳出格差と税源移譲」で,今後より厳しさを増す地方財政格差をとらえ,国が考えるべき税源移譲の方法について示唆を与えつつ,今後の地方公営事業の民営化を考えていく上での注意を喚起している。 一方、後者の理論的側面からのアプローチについては、研究協力者(加藤)による第5章「民営化と政府の選好」ならびに研究分担者(柳原)による第6章「資本蓄積,資本減耗率と民営化の成否」において扱われている。前者では産業組織論における静学的枠組みのなかで,政府が民営化を行うか否かの判断が政府の選好に依存して決定されることを示した。また,後者はこれを動学的枠組みに拡張し,民営化がもたらす経済への影響について,民営化直後の時点および定常状態において幅広く行っている。
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