研究概要 |
オプションを分析する際には,同じ時刻に観察された原証券価格とオプション価格を用いることが望ましい。日々(終値)データを用いた従来研究に対し,この研究では日経平均225種(NK225)のプットおよびコール・オプションについて,2000年1月から12月の約定(取引)毎の価格を記録したティック・データを用いて,ボラティリティ・スマイルと呼ばれる,マネネス(行使価格と原証券価格の比率)とインプライド・ボラティリティ(IV)との関係を検証し,次の結果を得た。1)日々データによるIVはティック・データによるIVと一致しないことがあり,日々データでは安定したように見える場合もティック・データからみるとかなり不安定な変動が見かけられる。2)取引が,その直前に提示されていた気配のどちら側でおこったかが,IVに有意な影響を及ぼす。3)こうした効果を除いても,ボラティリティ・スマイルは観察される。4)スマイルのラインからかけ離れた大きなIVの値は,原証券(NK225)の変化に対するオプション価格の弾力性が小さなところ(イン・ザ・マネーのオプション)でおこっており,そのときの約定数量は必ずしも大きくない。これらの結果は,a)ボラティリティの変化によってオプション価格が受ける影響度合いは,ニア・ザ・マネー(NTM)のオプションが最も大きく,実際,NTMのオプションの取引高が最も多いこと,b)ボラティリティが変化するときNTMのオプションで最も大きなポジション調整を必要とすること,従って,オプションの取引コストがその種類によって一定ならば,NTMのオプションは取引コストがかかる分だけ割安でなければならないこと,c)オプション自体の取引動機が,原証券のボラテイリティという直接には観察できない変数をめぐった投資間の意見の相違にもとづいていること,といった理論仮説と整合的であることを示す。
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