研究概要 |
本研究の目的は,日本企業の新しい人事管理特性を進化型として抽出し,その発現プロセスと機能性を明らかにすることである。そのときの鍵概念が,特定の人事管理と情報システムの合理的な結合を意味する組織モードの双対原理である。また特定の組織モードの合理性を条件づける人事情報の費用である。具体的な調査課題は次の4点であった。 (1)かつての伝統的な日本型組織モードは,現代において実際どうなっているのか,その派生型を含めて確かめること。 (2)日本型組織モードに変異が見られるとすれば,その発生のプロセスを確認すること。 (3)実際の組織モードがそうなっているのはなぜかを説明すること。 (4)以上の作業から,日本型人事管理の進化型を抽出し,それが財務的業績に対して機能的でありうるかを統計的に確認すること。 ケーススタディとサーベイ・リサーチの結果から次のことが明らかになった。1)現代の日本企業における機能的な人事管理は,「職務主義のインセンティブ・システム」と「人事権の人事部集中」が結合した形態である。2)この形態に「サクセッション・プラン」と「キャリア自律支援」という新しい人事施策を追加すると更に業績に対する説明力が高まる。以上の結果から,情報の非対称性と粘着性に由来する「人事情報の費用」という人事管理の機能性を条件づける新しい概念を導出した。そして,日本型人事管理は人事情報の費用問題を解決するように進化的に修正されるという知見を得た。
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