研究課題
基盤研究(C)
電力料金規制が電力会社の会計行動にあたえる影響、その行動と株価との関係を実証分析した。原発稼働から生じる廃炉費用と核燃料の再処理費用について、年々の費用がいかなる誘因にもとついて裁量的に決定されているのか、それぞれの裁量的費用はvalue relevantであるのかを検証したものである。第1に、年度の再処理費用は、利益の不確実な変動を平準化するように裁量的に測定されているのにたいして、年度の廃炉費用は利益平準化には利用されていない。かりに費用の期間配分のパターンが、利益平準化目的で裁量的に決められているとすれば、費用の量的増加(利益の先送り)は、将来の業績悪化を投資家に推測させるであろう。第2に、その仮説と整合的に、裁量的再処理費用はvalue relevantであり、それにかかる係数はマイナスであった。さらに、再処理費用の裁量的増加は、翌年の営業利益とマイナスの関係にあった。このように、裁量的再処理費用のrelevanceは、その規定誘因および将来業績の予測能力と整合的であることが判明した。第3に、廃炉費用と再処理費用は利益の質を低下させておらず、費用を裁量的に測定することが会計情報の有用性を低めるという証拠は得られなかった。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
経済学論集 70
ページ: 29-59
40006570717
The Journal of Economics Vol.70, No.3
経済学論集 第70巻・第3号