従来、少なくとも商法上のストック・オプションを監査役に付与することはできなかった。ところが新株予約権制度の創設によって、誰にでも新株予約権を付与できるようになったため、監査役にストック・オプションを付与する実務がさらに広がってしまったと考えられる。監査役の独立性という観点からすれば、ストック・オプションを付与すべきではないので、新株予約権制度は社会的コストを生み出している。 監査役に新株予約権がストック・オプションとして付与された場合の付与理由をみると、取締役と区別している会社とそうでない会社があり、監査役の位置づけが両者で異なっていることがわかる。そこには、役員の一員であるという運用と、商法上の監査役の位置づけとの齟齬が見られる。 わが国の場合、役員が自社の株式を処分・換金することは少ないと言われていたが、役員の所有株式数の推移を調査することによって、そのことを裏付けるデータを入手することができた。ストック・オプションの行使によって所有することになった株式についても、そのような行動が維持されるとすれば、付与時点におけるストック・オプションの価値を計算する公式に代入すべき数値を調整しなければならない。具体的には、ストック・オプションの行使によって手に入れることのできる株式が、事実上、譲渡制限付株式であるという点を考慮に入れて、オプション評価式を運用する必要がある。ただし、ストック・オプションの普及が、日本の企業社会におけるルールまで変化させることになれば、それに対応して修正を行わなければならない。
|