研究課題/領域番号 |
15530322
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
社会学
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
渡邊 登 (渡辺 登) 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50250395)
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研究期間 (年度) |
2003 – 2005
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研究課題ステータス |
完了 (2005年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2005年度: 500千円 (直接経費: 500千円)
2004年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2003年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
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キーワード | 住民投票 / 市民社会 / 公共圈 / 政治的機会構造 / 政治文化 / 公共圏 / social capital |
研究概要 |
本研究では新潟県巻町を代表とする住民投票運動の事例分析を行い、住民投票運動を通じて従来型の地縁・血縁・社縁に限定された拘束的な関係が社会関係資本として維持されつつも、その関係形成を規定する「文法が」転換されつつあることを明らかにするとともに、それを惹起する政治的・社会的・文化的諸条件を検討してきた。次いで、NPO・NGOを支える市民自治型=「新しい政治文化」型と、「地方」の「文法」を規定する「(新しい政治文化と伝統的諸関係)折り合い型文化』の並行存立・共存関係によっておそらく構成されるであろう日本型市民社会をより広い文脈のなかで位置づけるために、後進的発展国家として近代化を経験し、多元的民主主義への移行を果たした日本と相似的な国家である韓国を比較対毎とし、特に類似の問題解決型行動の事例として韓国において、初の自主管理による住民投票を行った全羅北道扶安郡の事例を選択し、その異同を検討した。住民投票という手段で問題の一定程度の決着をみた日韓の問題解決型行動の比較分析で明確になったことは、政治的機会構造の開放性/閉鎖性という軸で見る限り、住民意思表出の制度的機会は両国において極めて限定的であったことである。しかし、韓国においては(この問題もその契機の一つとなって)住民投票法が成立したことは開放性の程度を高める契機を獲得したと見ることもできる。他方で日本においては、依然として住民投票の法制化には極めて慎重である。ただ、巻町の住民投票施行以降、少なくとも地域社会のレベルでは住民の意思表明の手段として、その正当性を獲得しつつある。つまり、地域社会では住民意思に対する応答性の程度は高まりつつあるように思われる。しかし、今回の巻町の事例で明らかなように、日本の場合は原発政策という国レベルの政策決定の問題が地域社会の立地問題と倭小化(地域社会の意思決定問題に限定化)され、環境政策の変更を含めた政策決定が国民に開かれた場で議論される機会が存在しない。このように、政治的機会構造の国レベルの応答性の程度という面では日本は低い。他方、韓国では世論の強い支持を背景に全国レベルの市民団体の影響力が強く、政策決定システムへの参画が現実に行われており、応答性の程度は非常に高い。この権力構造の流動性(人材のフレキシビリティ)は欧米型とも言える。日本で着目すべきは、前述した日本型市民社会が今後どのようなモデルに発展しうるのかということであろう。また、扶安での自主管理の住民投票の実施が地域社会でのsocial capitalの構築にどのような影響を及ぼすのか-巻町のように複合型政治文化が成立し、それを基盤にしたsocial capitalが成立しうるのか、そしてそうであるとしたら、それは現在の「トップダウン型」市民社会とどのようにきり結ぶのか等、今後の重要な課題である。
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