研究概要 |
本研究では,質的インタビュー調査の概念と論理について,近年の欧米圏での達成をふまえた理論的方法的再検討に中心的に取り組んだ。その結果,第1に,従来の「採鉱モデル」に代えて,「交渉モデル」に基づくインタビューの再概念化が必要であることを確認した。その上で,第2に,質的インタビュー調査に含まれる,「質的」,「インタビュー」,「リサーチ」という3要素に着目して,質的インタビュー調査の再概念化をはかった。そして,質的インタビュー調査とは,当事者性と他者性を帯びた「意味」に焦点を合わせ,調査者と研究参加者とのシンボリックな相互行為を通して,両者の再帰的関係の中で,系統的な知識産出をめざす活動であるとした。第3に,質的インタビュー調査の「リサーチ」(一貫した論理と手続きに基づく系統的な知識産出活動)としての質をいかに確保するかという問題について,インタビュー調査の論理的階梯として,S・クヴェールらの議論を参考に,主題設定,調査デザイン,インタビュー実査,文字化,分析,確証,報告作成・公表という7段階を区分した上で,各段階での作業や分析の妥当性を確保するための貿意点を整理した。また,質的研究の評価規準をめぐって,従来の実証主義的規準に代わるものとして近年提案されている各種の代替案の検討も行なった。さらに,以上と並行して,農家インタビュー調査の実際に対して上記の概念や論理がどのような示唆や指針を与えるかについても再考と試行を行なった。
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