研究課題
基盤研究(C)
本研究では、研究課題に関して以下の3つの側面から考察を行った。1.エゴイスティックな主体からなるアナーキーな世界として社会的ジレンマを想定した上で、いかにして各主体の選択・行動を制約するルールや制度が実現されうるのか、そしてそれが可能であるとすればその契機はどこにあるのかを、ゲーム論的研究や公共経済学、社会関係資本に関する研究、国際関係論等における議論を参照しつつ考察し社会的ジレンマを解決するための制度デザインに必要とされる要素を抽出した。2.コミュニティにおける社会関係に着目し、社会的ジレンマにおける行動とコミュニティ・メンバーとしての行動とをリンクさせることにより社会的ジレンマが解決される場合があることをコンピュータ・シミュレーションによって示した。3.社会的ジレンマにおける協力行動を促進する要因として市民的活動への参加に焦点をあて、そのような活動に参加することが実際に人々のフリーライダー傾向を抑制し、同時に、順社会的行動を促進する効果を持つか否かについて調査データにもとづいて検討した。その結果、近所づきあいの程度や熱心に活動に参加している団体数が多いほどフリーライダー傾向が有意に低下することが明らかになった。また、「熱心に」取り組んでいる活動団体があると回答した人々は、そのような活動団体のない人々と比較して、一般的信頼感が高く互酬性規範や評判をより強く意識していることが明らかになった。以上の考察から得られたひとつの結論は、社会的ジレンマを解決するためには、コミュニティであれ国際社会であれ、なんらかの制度によって支えられている「秩序ある世界」に埋め込まれなければならないということである。特にローカル・コミュニティにおいては、社会関係資本への投資にもとづく市民的積極参加のネットワーク(「関係性」という秩序)が人々の協力行動を促進する上で重要な要因となる。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (10件)
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「教育と社会に対する高校生の意識」調査-第5次調査報告書(片瀬一男, 木村邦博, 阿部晃士編)(東北大学教育文化研究会)
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Mathematical Sociology Series 1 : Introduction to Mathematical Sociology (SUDO, Naoki and Takatoshi IMADA(eds.))(KEISO-Shobo)
Consciousness on Education and Society in High School Students : Reports of 5th Survey (KATASE, Kazuo, Kunihiro KIMURA, and Koji ABE(eds.))(TOHOKU Research group of TOHOKU University for the Studies of Education and Culture)
日本知能情報ファジィ学会誌 16(3)
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Journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics 16(3)
The Study of Sociology (Shakaigaku Kenkyu) 76
数理社会学シリーズ1数理社会学入門(数土直紀・今田高俊編)(勁草書房)
「教育と社会に対する高校生の意識」調査-第5次調査報告書(片瀬一男・木村邦博・阿部晃士編)(東北大学教育文化研究会)