研究概要 |
主な知見としては以下のようなものが挙げられる.1.Sequential Priming Taskを用いて,(伝統的性役割vs.非伝統的性役割)×(男性vs.女性)をプライムしたときのジェンダー・ステレオタイプの活性化を検討した結果,伝統的男性次元においてステレオタイプの活性化が顕著に見られることを見いだした.2.将来のジェンダー関連自己表象を活性化させた女性参加者の女性に対するジェンダー・ステレオタイプの適用を検討したところ,伝統的性役割に関する自己表象が活性化した女性は家庭女性に好意的にキャリア女性に非好意的になった.3.脅威状況でのジェンダー・ステレオタイプの適用を調べるため,死すべき運命の顕現化(MS)を操作した上でステレオタイプの適用を測定した.男性参加者ではMS時では家庭女性をより伝統的な意味で女性的にキャリア女性をより男性的に見るようになった.この傾向は伝統的性役割観を持つと主張する男性において顕著であった.女性参加者では伝統的性役割観を持つと主張する場合には,MS時では家庭女性をより好意的にキャリア女性を非好意的に評価し,平等的性役割観を持つと主張する場合には逆の方向の結果を示した.4.男女相補関係を示唆する異性愛プライムを行った男性参加者の女性に対するジェンダー・ステレオタイプの適用を検討したところ,異性愛プライムをされた男性参加者は統制群に比べ,伝統的女性を好意的に非伝統的女性を非好意的に評価するようになった.この傾向は平等主義的性役割観を持つと主張する男性において顕著であった.5.上記研究の他に,男女の個人間競争状況における男性参加者のジェンダー・ステレオタイプの自動的活性化や,「作動性」の次元と「共同性」の次元が異性に対してジェンダー・ステレオタイプを適用する場合と同性に対して適用する場合とでは異なるかについての検討を行った.
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