研究概要 |
本研究では第1に、これまでに収集済みの、同一の国立大学教員養成学部学生を対象とした3回、合計260人分の調査結果を整理・分析した結果、「奇数と奇数の和は偶数である」などの整数の一般的性質についての証明のために文字式を立てる際に、数的関係表現の大前提である、「文字の同一性」(加藤国雄,1965年)を踏みはずした文字式を立てる大学生が60%もいることを明らかにした。この誤りは独立して変動する2数を表現するのに、同じ文字を使うというものであり、「2数-1文字対応の誤り」と命名した。さらに、中学生の文字式に関する調査結果を分析し、この誤りは中学1年生段階で生じている可能性があることを明らかにした。 第2に、文字式で証明すべき命題をより具象的なしかたで表現しておくことで、この種の誤りを抑制できることを、大学生のデータを再分析することで示した。このことを手がかりとして、高校生向けの補習用課題を考案し、その効果を事前事前-挿入課題-事後テストの実験計画によりその効果を確かめたところ確かに、その効果が見られた。 第3に、この研究の成果に基づく「2数-1文字対応の誤り」脱却のため課題を模擬授業の形で大学生6名に示し、その感想等を聴取した。このことにより、中学・高校時代の数学の成績がよかった大学生でも、この種の誤りを犯しがちなこと、高校生・大学生のための補習教材が具備すべき条件等について、大いなる示唆をえた。 第4に、以上の第3、第4をふまえて、高校生を対象とした、より介入的な実験計画のもとでの実験を平成17年3月に実施し、現在、その結果を分析中である。これにっいては、平成17年9月開催予定の日本教育心理学会第47回総会で発表予定である。
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