研究概要 |
研究1では,教職生活について作成された比喩が,それに関わる悩みを解決したかどうかによってどのように異なるのかについて検討した。対象は,小学校教員160名,中学校教員105名であった。その結果,(1)授業:小中学校教員ともに,授業の悩みを解決した人には「共同作成の場」が多く,未解決の人には「未知の展開」が多い。(2)教職:悩みが未解決の小学校教員には「演技者」が多い。一方,解決した中学校教員には「演出家」「学ぶ者」が多く,未解決の人には「緊張・束縛」が多い。(3)子ども理解:解決した小学校教員には「多面的」が多く,未解決の人には「教師の自己理解」が多い。解決した中学校教員には「複雑,奥が深い」が多い。(4)生徒指導:解決した小学校教員には「父性と母性のバランス」「臨機応変」が多く,未解決の人には「母性的」「熱意・根気」が多い。解決した中学校教員には「母性的」が多く,未解決の人には「勝負・戦い」が多い。(5)学級経営:解決・未解決による違いはなかった。 研究2では,3人の小学校教員に,学級経営上の問題について2回ずつインタビューを行い,学級経営に関する悩み体験を通して,教師がどのような実践的知識をもつようになるかについて調べた。3人の教師は学級経営を「宇宙旅行」「和」「綿」にたとえた。それぞれのイメージは,「常に子どもの立場になって考えるべきである」などの6つの原理に分かれた。さらに,各原理は,「子どもはほめて育てる」などの複数の実践のルールに分かれた。3人の教師いずれにおいても教師と子どもの人間関係がもっとも重要であると考えていることが明らかになった。
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