研究概要 |
研究1・2では,5・6・8・11歳児と大学生計156名に対する面接調査を行った。幼児は生物学的要因が身体反応を生じさせることを理解していたが,心的要因がそれを生じさせることには気づいていなかった. 研究3・4では,心身相関に関する大人の信念を検討した結果,大人でも心身相関に関する詳細な説明枠組みを保持していないことが示された.しかし,心と身体が相互に関連しているという信念,心と身体の間で不特定の何か(気やストレス)が交換されるという信念が理解の基礎にあることが示された. 研究5〜7では,上記2つの信念に関する子どもの理解を検討した.6・8・11歳児と大学生計101名に対する面接調査から,幼児でも身体エネルギーの摂取が身体および精神の健康と関連することに気づいていることが示された.幼児は心(否定的な感情)を意図的にコントロールできると考えがちだったが,11歳児頃からそうでないと考えるようになった.幼児は心をコントロールできるとみなしているために,それを生物学的な因果枠組みに取り込めないようだ. 研究8・9では,心身相関の理解における先行経験と社会情報の役割を検討した.6・7歳児については,理解と心身症の先行経験との間に関連性が認められなかった.また,幼児期の子どもをもつ母親による心身相関の説明は,因果性を含まないことが示された. 以上の結果は5点にまとめられる.(1)幼児は心身相関について明確な理解を有していない.(2)少なくとも小学校1・2年生までは,たとえ心身症を経験したとしても心身相関を理解するようになるとは限らない.(3)児童期半ばから徐々に心身相関に関する気づきが生じてくる.(4)このことの背景に,心が身体諸器官と同じように意図的なコントロールがきかないものだという気づきがある.(5)幼児でも身体エネルギーの摂取が精神の健康にも影響すると答えるなど,心身相関の理解を構成する概念要素のいくつかは保持している.
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