研究概要 |
乳幼児をもつ親が子どもの感情・情緒状態を適切に認知することは,養育者として適切な行動をとる上で重要である。このような親の情緒応答機能を調べるために幼児の顔写真の表情を読み取るIFEEL Pictures(IFP)とその日本版(JIFP)が開発された。 本研究では,育児支援におけるJIFPの有用性を検討するために,第1に基礎的研究として女子大生,妊婦,母親,さらに育児中の子どもの年齢の違いによる母親のJIFPの基本的な反応の検討を行った。その結果,女性の妊娠,出産,育児といった日常の幼児との相互交流の経験が,その表情認知に影響を与えていることが明らかになった。第2に,臨床的研究では育児不安や育児困難を訴える母親のJIFPをその臨床像と照合し,特徴を検討した。この結果は,育児困難などの問題をもちながらそれを一人で抱えている母親をスクリーニングするときに,JIFPが役に立つ可能性を示唆している。 本研究では,IFEEL Story法を検討し,また関係性評価カテゴリーを開発するなど,施行法や評価法について,より実際的,臨床的に使用しやすくするための工夫を試みてきた。 今後はJIFP自体の妥当性,信頼性,客観性をより高めて,臨床場面で役に立つツールとしての可能性をさらに探って行くのと同時に,この3年間ではデーターの収集も女性・母親に限られていたので,男性・父親の情緒応答性の特徴についても検討して行きたい。
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