研究概要 |
ポリグラフ検査時の自律神経系反応パタンに基づき,有罪と無実の被験者を判定する新たな方法について検討を行った。従来より皮膚電気活動,呼吸運動,脈波がポリグラフ検査指標として用いられてきた。しかし,皮膚電気活動は順応し易く,また,脈波は交感神経系の活動レベルを正確に示し得ない。本研究では,新たなポリグラフ検査の自律系指標として,規準化脈波容積(NPV)の適用可能性について検討した。その結果,NPVは非裁決質問よりも裁決質問時により大きな有意な低下を示し,末梢血管緊張度の感度の良い指標であることが確認された。これ以降の研究においては,このNPVを信頼性・妥当性ともに有した自律系指標として用いた。自律系反応の相関パタンを捉えるために、感情喚起刺激に誘発された自律系反応を因子分析したところ,血圧と末梢血管の因子、呼吸振幅と心拍数の因子、皮膚電気活動指標の因子が抽出され,生理システム毎に自律系反応がパタン化できることが示された。さらに,裁決質問時に特徴的な反応変化を見いだし,この生理的変化を「裁決質問パタン」と名付けた。有罪の被験者の裁決質問時の反応はこのパタンに一致するのに対し,無実の被験者の反応は一致しなかった。結果から,無実と有罪の被験者を判別するためには,有意差の個数,その有意差が裁決質問パタンと一致する率,末梢血管抵抗に関連する反応が裁決質問パタンに一致する率,という3つの情報が有効であることが示された。以上の研究をもとに,ポリグラフ検査に対する潜在クラス的判別法を開発した。この多変量解析法は、生理システム毎に得られた反応が,裁決質問パタンへどの程度当てはまるかに基づいて有罪・無実を判定する。この判別法は従来の多変量解析法よりも高い判別成績を示した。
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