研究概要 |
本研究の主な目的は、岩手県における学校教育と民俗芸能の関係を捉え、岩手県の沿岸地域に伝承されている神楽系の「七つ物」と剣舞系の「七つ物」について研究すると共に、大学における民俗芸能の実践的な研究を通じて、学校教育に民俗芸能を導入する方法と視点を提示することであった。 本研究によって、次のような具体的な研究成果を得ることができた。 1.民俗芸能の分類において,「七つ物」を風流に位置づけると共に、神楽系の「七つ物」と剣舞系の「七つ物」があることを明確にすることができた。 2.平成16年度の岩手県教育委員会の全県レベルの民俗芸能調査を捉えなおすことによって、岩手県における学校教育と民俗芸能の全体的な傾向や「七つ物」を取り上げている学校の実態把握をすることができた。 3.黒森神楽のシットギ獅子における「七つ物」を基に岩手県沿岸地域の複数の「七つ物」が誕生し、変化しながら現在まで伝承され続けていることが把握できた。 4.小本小学校のフィールドワークにより、4種の「七つ物」の由来や演目等を把握すると共に、インタビューやアンケート調査によって、子どもたちや教師の心情をとらえることができた。 5.主に神楽系の「七つ物」の源泉である黒森神楽、「七つ物」の代表格の中野七頭舞、そして筆者が最も魅了された中里七ツ舞についての基礎的研究を行った。 6.学校教育に民俗芸能を導入する方法として、筆者が主張する伝統継承型と素材発展型の方法についての実践的研究を行った。結果として、岩手大学に中里七ツ舞を継承することができた。また学校教育における民俗芸能の新たな取り組みの方法を提示することもできた。 残された課題は少なくないが、本研究は民俗芸能にとって意義ある研究であったと確信している。
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