研究概要 |
本研究の目的は,幼稚園における道徳教育プログラムを開発することである。小中学校と比べ,幼稚園教育には幼児の道徳発達を促すプログラムはわずかしか存在しない。本研究では,子どもの道徳発達に関する心理学的研究の成果を踏まえ,また幼稚園現場での実践事例の収集と分析を通して,幼児の道徳的自律を支える環境づくり,道徳的体験を促す活動と仲間遊び,道徳教育に有効な絵本を用いた指導方法,動物の飼育を通した教育方法を包含した教育プログラムを開発した。さらに,プログラムの評価を目的として,幼児の道徳発達と学級の道徳的雰囲気を測定する方法を考案した。 研究1:幼稚園の教師254名を対象にした調査から、教師は幼児期の思いやりの発達にとって仲間との相互作用経験が最も大きく影響すると考えており,仲間とのトラブルに対しては教師は見守るという態度が有効であると信じていた。このような信念をもとに,保育環境をつくり出すと考えられる。 研究2:幼児の罪悪感の発達と、幼児の対人葛藤場面での保育者のかかわり方について調査を行った。そして、謝罪行為、向社会的行動と罪悪感との関係を考察し、罪悪感の発達環境としての大人のかかわり方に関する自己評価項目を作成した。 研究3:絵本を用いた教育プログラムを試作し、東京都の区立幼稚園教師一人が実践を行った。絵本通して,子どもの道徳的な感性,言葉の感覚,友達や幼稚園に対する興味が総合的に育成されていくことが示唆された。 研究4:幼稚園での小動物の飼育を用いた道徳教育、及び集団場面での絵本を用いた教育実践をプログラム化した。これまでの研究成果を踏まえ、5歳児の研究データから3歳〜4歳の学級へ応用するため、プログラムに含める小動物、特にムシ類の飼育方法、及び絵本のレパートリーを増やした。それを10名の幼稚園教師に評価してもらった。昨年までと同様に、3年間のプログラムは妥当性、実用性、経済性、発展可能性のすべての観点で高い評価が得られた。
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