研究概要 |
本研究の目的及び計画は,アメリカ・カリフォルニア州科学カリキュラムにおける知と学びの構造を明確にするとともに,これまでの研究で得られた知見に基づいて,カリフォルニア州科学カリキュラムの有効性について,日本の小学校で実際に検証することであった。研究目的及び計画に従って,次のような研究成果を得た。 第一に,2003年版カリフォルニア州科学カリキュラムについて,物理科学領域を中心として,小学校各学年の目標及び内容を明らかにした。その上で,2003年版科学カリキュラムと1990年版科学カリキュラムを比較することを試みた。その結果,2003年版カリキュラムは90年版と比較すると,学習内容が量的にも質的にもより高度になっていることが分かった。2003年版では,実験を中心とした児童の学習活動が授業時間全体の20〜25%に納まるように改められている。90年版と比べると,探究活動の時間がおよそ半分になっている。2003年版科学カリキュラムはそれ以前のものと比べて,知を重視して学び方の比重を軽くした,という大きな特徴を持っていることが分かった。 第二に,2005(平成17)年12月,広島大学附属東雲小学校において,『全米科学教育スタンダード(NSES)』(1996)に基づいて改訂された,2003年版カリフォルニア州科学カリキュラムに取り上げられている内容が,日本の子どもに適した形で学習指導可能かどうかを検証した。37名の児童を対象として,学習前後において実施したアンケート調査によれば,第5学年の児童は理科教科書の取り上げられている以上に,多くの元素に関する知識を持っていることが分かった。実際の研究授業では,「周期表」を用いたゲームが導入された。学習後に実施したアンケート調査の結果から,第5学年での理科学習において,「周期表」を導入する可能性は検証された。
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