研究概要 |
社会科教育は地域社会や地域経済との関連性が強い.特に,戦後の経済発展による都市と農村の地域格差の拡大と高度情報社会の進展による情報格差の問題は,学校教育にも影響している.現実問題として,過疎地や離島などの条件不利地域の社会科教育においては課題が多く存在している.本研究の目的は,社会科教育における地域経済の役割を再評価し,さらに社会科教育環境としての地域資源を有効に活用し,高度情報社会における教育システムを構築することである. 分析の結果,つぎの諸点を明らかにした.第1に,条件不利地域の学校教育では,社会科教育の一つの柱である社会科見学,特に情報産業などの先端産業に関しては,地域に適した産業が少なく,教育環境の問題として指摘できる.第2に,条件不利地域での社会科教育,特に経済学教育を推進するには,戦後の消費構造の変化の分析からはじめるのが有効であることを明らかにした.つまり,戦後の消費構造を分析することにより,戦後の経済成長の過程で見失われてきたものや,農村地域が果たしてきた重要な役割,例えば,食料の安全性や自然環境の豊かさの視点を社会科教育に組み込むことの重要性を明らかにした.このように戦後の消費構造を分析することにより,農村などの条件不利地域の再評価が可能になり,社会科教育の教材として重要な役割として評価できる.なお,戦後の消費構造の分析には多変量解析を応用した.第3に,条件不利地域の教育環境の改善には,インターネットなどの情報通信技術(ICT)を有効に活用することにより解消されることを指摘した.第4に,社会科教育,特に地域経済学の教育システムの具体的な講義内容を開発し,これを教科書形式で示した.この具体的な内容を研究成果報告書で公開した.
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