研究概要 |
1.3〜6歳の幼児計78名を対象に,動画による表情の理解能力について検討した。5,6歳児の成績はほぼ同等であるが,3歳児の成績はそれらと比べて有意に低く,4歳児はその間に位置していた。しかしながら,3歳児の正答率も約50%であり,基本的な表情の理解は可能になりつつあると考えられた。一方,開口怒りと目・眉部驚きの表情では,加齢に伴う成績の上昇が認められず,両表情の理解は幼児期以降になされることが示唆された。また,7〜32歳までの自閉性障害児・者計31名の結果と比較したところ,IQ70以下の群は3歳児と,70以上の群は5,6歳児と非常に類似した成績を示しており,誤答の傾向もほぼ一致していた。このことは,自閉性障害群の表情理解の発達が,障害のない幼児の場合と大きな質的な違いがない可能性を示唆している。課題を改善して,特に3,4歳児を対象にさらなる検討を行い,その結果と比較して自閉性障害群の反応特徴を明らかにしていくことが今後の課題であろう。 2.CA7歳10カ月の高機能自閉症児童を対象に,表情理解学習プログラム(若松,投稿中)を用いた計14回の学習を行った。その結果,表情理解テストの正答数(MAX=36)は学習前の7から32に上昇した。また,若松(投稿中)の結果と一致して,学習の前半では動画の方が静止画よりも正答率が高くなっており,表情理解学習には,やはり動画の使用が望ましいのではないかと考えられた。母親と学級担任による日常場面の評定では,感情や表情の表現,理解の両側面でプラス方向の変化が比較的多く認められた。さらに,学習開始後の母親の記録からも,表情理解学習の日常場面への効果が示された。学習に時間を要した本事例では,表情写真による家庭等での補充学習や,注目する部位を教示したりする母親の言葉かけも理解成績の向上に影響を与えたことが推測され,家庭と連携した指導の重要性が示唆された。
|