研究概要 |
重度視覚障害者(全盲者、重度弱視者)の職場への進出の停滞について、事業所の考え方、大学など教育機関におけるカリキュラムを通して、更に、障害者本人の考え方から調査を行った。 障害者の雇用に際して,専門の技能と共に重視する点についてアンケート調査を行った。コミュニケーション能力88.4%,協調性81.4%など,コミュニケーション能力と協調性を重要視する事業所が圧倒的に多く八割以上にのぼるという結果を得た。組織内において周囲との関係を上手に作ることのできる人を望んでいる。また,ビジネスマナー,健康,文書作成能力があげられている。過去においては,幅広い教養のもとで新入社員の社内教育を行なうという状況であったが,昨今の経済状況はこれを許さず,即戦力が求められており,このことは障害者の雇用に際しても同様である。ビジネスマナーが採用の段階で考慮されるのは,象徴的である。 海外における障害者の就労状況について、大学を中心に聞き取り調査を行った。シドニー大学では、障害学生の就学支援が行なわれているが、就職に関しても、様々なサポートをしており、健常者と同様の職域に就職している。イタリアは、世界でも有数の普通学校での視覚障害者の教員が多いという国であるが,更に健常者などと変わらず,法学や情報など様々な分野で視覚障害者が仕事をしている。ただ,現在は普通の人間でも仕事を探すのは難しい状況ではある。 視覚障害者自身の能力のPRについては、HPやE-mailを使う方法と共に、公民の就職相談会への出席も具体的能力を提示できる場として極めて重要である。視覚障害者の就労を阻む最も大きな要因は,視覚障害についての無理解であり,「目が見えない場合,何ができるのか」は,障害者に一定の理解を持っている人々でも生じる疑問であり,この点の克服が第一の課題である。パソコン・音声出力装置・メールによってコミュニケーションや事務処理は可能であることなどの啓発が必要がある。
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