研究概要 |
Jonathan Beckとの共同研究により,一般のアファイン・リー環の場合にU_qの上三角部分環の結晶基底の具体的な記述を与えた.さらにこれを用いると一般の端ウェイト加群がレベル0基本表現のテンソル積に埋め込めるという結果を証明した.これはBeckと研究代表者によって対称なアファイン・リー環の場合に得られていた事実の拡張である.さらに,U_qの結晶基底に関するセルについてのLusztigの予想を解決した.(Duke Math.に掲載された) また,量子アファイン展開環の有限次元表現について,そのq指標を計算するアルゴリズムをC言語で記述し,大型計算機で計算した.今まで計算が実行できていなかったE_8型のときも計算を実行したが,最終結果を得るまでには至らなかった. 一方,箙多様体の一番簡単な場合であるR^4上のインスタントンのモジュライ空間について,その同変基本類の母関数であるネクラソフの分配関数を研究した.これは,ヤング図式に基づいた組み合わせ論的な表示式があり,数式処理のMAPLE言語を用いて大型計算機によって計算実験を行った.特に,その計算結果から分配関数が爆発公式をみたすこと,さらに爆発公式が分配関数を帰納的に決定することを予想した.そしてこの予想を実際に理論的に証明することに成功した.特に,分配関数のパラメータε_1,ε_2に関する展開の極がサイバーグ・ウィッテンのプレポテンシャルに等しいというネクラソフの予想が正しいことを証明した.(神戸大吉岡との共同研究,論文印刷中) さらにこれに引き続いて、インスタントンの数え上げとSeiberg-Wittenポテンシャルに関する連続講演を行い、講演録を発表した。その中では、数え上げの母関数の展開の種数が一の項を調べ、それが物理で予想されているものと一致していることも証明した。 さらにDonaldson不変量との関連を吉岡とLothar Goettscheと共同研究した。4次元多様体の上のインスタントンのモジュライ空間を考え、その上の自然なコホモロジー類を積分するものがDonaldson不変量であるが、b_+=1のときには、不変量はリーマン計量に依存する。二つのリーマン計量に関するDonaldson不変量の差を与えるのが壁越え公式であるが、これが上のインスタントンの数え上げの母関数で書けることを証明した。(ただし階数が二のときに限る)トーリック曲面のときに、モジュライ空間へのトーラス作用を詳しく調べることにより、この結果が証明される。論文は準備中である。
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