研究概要 |
カスプ形式に付随するp-進,またはA-進ヘッケ環のアイゼンシュタイン成分がゴレンスタイン環であることがわかれば、円分体のイデアル類群から得られる岩澤加群の構造が完全に決定できることは以前から知られていた.しかしこのことは大変困難な問題に見える,他方,モジュラー形式に付随する同様のヘッケ類についてのゴレンスタイン性は,上記問題に比較すると扱い易いように見える.実際スキナーとワイルスは,ある数値的条件の下でそのようなゴレンスタイン性を証明していた.我々の研究では,後者の問題をスキナーとワイルスとは全く異なった見地から考察し,また円分体の整数論への応用も得られた. まず,ヘッケ環のゴレンスタイン性については,mod pモジュラー形式の空間における同伴形式と関連させ, ・ある同伴形式の空間の次元が1ならば,モジュラー形式に付随するヘッケ環の,あるアイゼンシュタイン成分はゴレンスタイン環である, ことを示し,さらに2003年に発表された論文の結果の応用として ・ある一般ベルヌイ数(と易しい因子の積)がp-進単数であれば上記の1次元性が従う, という結果を得た.この二つをあわせるとスキナーとワイルスによるものと同様の結果となるのであるが,我々の結果は彼らのものより広い範囲のアイゼンシュタイン成分をカバーしている. 次に円分体の整数論への応用については, ・モジュラー形式に付随するヘッケ環のアイゼンシュタイン成分のゴレンスタイン性を仮定すると,岩澤加群をA-進ヘッケ環の言葉を用いて具体的に記述できる, ことがわかった. これらの結果をまとめた論文はJ.reine angew.Math.に掲載予定である.なお,上記の同伴形式に関する部分では,井草曲線状の楕円曲線のセルマー群を用いた,あるペアリングが重要な役割を果たす.これはアルマーによって(別の見地から)導入されたものを稔ることによって得られた.上記論文投稿後,上記ペアリングと同様に良い性質をもつものが別の仕方で構成できることもわかった.また,上の論文ではヘッケ環の二つの固定空間を除いて議論していたが,除かれた部分についての研究も進展している.
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