研究概要 |
研究成果は二つの主題に分かれる。L-函数論と素数分布論である。勿論これらは本研究の主眼を通して互いに深く関係している。 ○主結果は「保型L-函数について、リンデレーフ常数1/3以下」の確立であった(これは極めて著名な数学誌Acta Mathematica第195巻(2005)に出版掲載された:海外共同研究者M.Jutila教授との共著)。更には、これをRankin-Selberg L-函数に拡張し、Princeton学派らの中心的な結果を大きく凌駕する結論を得た。それは、これら一群のL-函数に対して「リンデレーフ常数2/3以下」の確立を主張するものである。再び、Jutila教授との共同研究結果である。一様性につき多少の未完成さは残るが、これの改良は至難であろう、と専攻研究者から極めて高い評価を受けている。概要は、2005年米国にて開催された国際会議Multiple Zeta-FunctionsにてJutila教授によって発表された(本橋は校務にて参加出来ず)。証明の詳細は、本橋の一般理論の一遍と共に米国数学会より報文として出版された(2006)。 ○近年、整数論分野は素数分布における大発見を相次いで得た。その一つはD.A.Goldston, J.pintz, C.Y.Yildirim3氏(GPY)によるものであり、古来著名な「双子素数予想」への初の確実な接近と考えられている。本橋は彼らの錯綜した議論を極く透明とし、「驚嘆すべき」と評される簡潔な証明を得た。それはGPY3氏と本橋との共同論文として学士院紀要に発表された(2006)。更に、最近に至り、本橋とJ.pintzは関係する「節法」につき理想的な改良を達成し、この成果を本橋はコロンビア大学(N.Y.)にて本年5月に開催される国際会議にて(校務が許すならば)講演する予定である。この研究成果はゼータ及びL-函数論に深く関連する。 ○研究終了後になるが、極々最近に至り、本橋の一連のNoteの内第14論文(2004)の着想を元にV.BlomerとG.Harcosが重要な貢献をなした。本橋は独自の方法に依って彼らの結果を再証明し、さらに深める事により、「主ユニタリ系列表現」に付随する保型L-函数の平均値を完全スペクトル分解することに成功した。長年の難問の解決である。本研究の主題の大いなる発展が予期されるところである。今後本橋は、これら「一般平均値理論」を深化し、素数分布論への具体的応用に進む。
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