研究概要 |
結び目と3次元多様体の不変量について研究をおこなった。 平成13年9月に筆者が開催した研究集会「Invariants of Knots and 3-Manifolds」のproceedingsを、筆者は編集し、オンラインジャーナルのGeometry and Topology Monographsから出版した。とくに、筆者はこの研究集会のproblem sessionの内容をまとめた未解決問題集を編集しproceedingsの一部として出版した。 未解決問題の中でも重要な問題である結び目のKontsevich不変量のループ展開、とくに、その2次の項を表示する2ループ多項式について筆者は研究をした。筆者は、2ループ多項式を結び目補空間の無限巡回被覆の同変Casson不変量とみなす観点から、Seifert曲面のspineの3次以下の有限型不変量を用いて2ループ多項式を表示し、Gaussian diagramを導入してこれを具体的に計算することにより、結び目の種数を2ループ多項式の次数で下からおさえる評価を得た。また、筆者はすべてのトーラス結び目とすべての種数1の結び目についてその2ループ多項式を明示的に求めた。さらに、筆者は与えられた結び目のケーブル結び目の2ループ多項式を与える公式であるケーブル化公式を導いた。 筆者は、本研究の研究分担者の葉廣和夫氏と共同で低次元トポロジーセミナーを開催した。講演者は、Sergei Duzhin,樋上和弘,Andrew Kricker, Julien Marche, Jean-Baptiste Meilhan, Gregor Masbaum, Jorgen Andersen,横田佳之,Jozef Przytyckiの各氏で、講演内容はいずれも結び目と3次元多様体に関するこの分野の一線級の内容であった。とくに、Kricker, Marcheの両氏は、本研究補助金の援助により数理解析研究所にそれぞれ2週間程度滞在した。これらのことは筆者や研究分担者との共同研究をすすめるにあたって、また、大学院生等の若手研究者との研究交流の面からも、大変有益であった。
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