研究概要 |
本研究は四元数射影空間(より一般に四元数ケーラー多様体)の全複素部分多様体を対象とし,ケーラー幾何学と四元数微分幾何学が相互作用する四元数複素微分幾何学とでも呼ぶべき興味深い研究領域をなす.四元数ケーラー多様体(M^^〜,Q,q^^〜)の部分多様体M^2mが,全複素部分多様体であるとは,Q|_Mの大域的な切断I^^〜が存在して(1)I^^〜^2=-Id, (2)I^^〜TM=TM, (3)<I^^〜,K>=0をみたす任意のK∈|_MについてKTM⊥TMを満たすときをいう.典型例として,本研究代表者塚田が分類した四元数射影空間HP^nの第2基本形式が平行となる全複素部分多様体がある.Z={I^^〜∈Q|I^^〜^2=-ID}はM^^〜上のS^2-束で, (M^^〜, Q,g^^〜)のツイスター空間と呼ばれている.Zには複素多様体の構造,さらにM^^〜のスカラー曲率が正のときにはアインシュタイン-ケーラー計量が自然に導入される. 本研究で得られた主な成果は次のとおりである: 1.HP^n及び四元数双曲空間HH^nの複素n次元全複素部分多様体の存在と一意性に関する基本定理を証明した.これはAlekseevsky-Marchiafavaの予想に対し肯定的な解決を与えるものである. 2.四元数ケーラー多様体M^^〜の全複素部分多様体Mから,M^^〜のツイスター空間Zへの新しいリフトを考案し,Zの全実極小部分多様体が構成できることを示した. 3.HP^nの第2基本形式が平行となる全複素部分多様体に対し,アインシュタイン条件などの曲率に関する条件による特徴付けを与えた. 4.全複素部分多様体と類似の性質をもつ複素2次超曲面の等方的ケーラー部分多様体に関する基礎的研究を行った.
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