研究概要 |
研究代表者は、CW複体の実K群を単にアーベル群の圏内で計算するのではなく幾何学的な構造を含めて計算するために、疑似KOホモロジー同値という概念を1990年に導入した。そして、CW複体や多様体をまず最初に疑似KOホモロジー同値で粗く分類し、しかる後にK理論の局所化同値でより細密に分類するという手法を構築して現在まで一貫した研究を進めてきた。研究代表者は、疑似KOホモロジー同値に関連した研究対象を中心にして研究を押し進め、既に幾つかの満足すべき研究成果を得ている。 平成12年以降の研究成果として、KU群が階数2の自由群の直和である場合にそれらCW複体(又はCWスペクトラム)のKO群に作用するアダムス作用素の振る舞いを考察してK理論による局所化同値型を決定した。さらに,当該研究期間の平成15年-17年度の研究成果として、KU群が階数1の自由群と1つの2捩れ巡回群の直和である場合において、それらCW複体(又はCWスペクトラム)のKO群に作用するアダムス作用素の振る舞いを詳細に考察してK理論による局所化同値型を決定した。これら2つの場合は疑似KOホモロジー同値型が既に決定されているので、少細胞数のCW複体を幾つか構成しそれらの幾何構造を利用した結果、疑似KOホモロジー同値型をより精密にしたK理論による局所化同値型の決定に成功した。 KU群が階数1の自由群と1つの2捩れ巡回群の直和KU_*X〓Z【symmetry】Z/2^mであるCW複体(又はCWスペクトラム)XのK理論による局所化同値型の決定に際しては,双対性が成り立つがゆえにKU_0Xが階数1の自由群と1つの2捩れ巡回群の直和でKU_1Xが0である場合に限定できる.このように限定されたCW複体(又はCWスペクトラム)Xに対し,その疑似KOホモロジー同値型は本質的に次の7つの場合Σ^<2i>∨SZ/2^m,Σ^<2i>∨V_m,Σ^<2i>∨W_m,M_m,N_m,Q_m,R_m(0【less than or equal】i【less than or equal】3)に分類される.CW複体(又はCWスペクトラム)Xの疑似KOホモロジー同値型がこれら7つのいずれかの場合に分けて,複素アダムス作用素の型を調べると,KOホモロジー群上でのアダムス作用素の振舞いはその複素アダムス作用素の型によって定まる.このアダムス作用素の振舞い具合によって,各々の疑似KOホモロジー同値型をもつCW複体(又はCWスペクトラム)XのK理論による局所化同値型が(本質的に)何通りあるか決定される。この結果,KU_0Xが階数1の自由群と1つの2捩れ巡回群の直和でKU_1Xが0であるCW複体(又はCWスペクトラム)XをK理論による局所化同値型によって分類することができる。
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