研究概要 |
本研究課題における研究目的は、旗多様体の量子コホモロジーにおいて可積分系である戸田格子が現れる仕組みの理解である。Givental-Kimの結果をアフィンルート系に対して示したM.A.Guest氏との共同研究(Gomm.Math.Phys.217,475-487,2001)はその第一歩であった。これは有限次元の旗多様体における次数1の有理曲線のモジュライの幾何にとどまるものである。その続きとして、真に無限次元様相が重要となる領域の研究を行なうこととなった。すなわち、まず、無限次元旗多様体(無限次元グラスマン多様体などの部分的旗多様体をも含む)の量子コホモロジーの基礎付けを確立することが目的となった。有限次元シンプレクティック多様体に対する同様の不変量の構成法を参考にするため、Hamilton系の周期解の構成についてHofer-Zehnderらの仕事(キャパシティ)の考察を行なった。これの無限次元化が今後の課題として残った。特に、良い(例えば非特異な)有限次元多様体の極限として捉えにくい場合が問題となる。 以上のように、無限次元旗多様体の量子コホモロジーは幾何学的構成物としては未だ仮想的である。 仮想的なままで、その代数構造を研究するアプローチについて、無限次元旗多様体のある例において、いくつかの基本的な構造を仮定すると、フロベニウス多様体としての特徴(ポテンシャル性)が崩れる、という現象が観察された。D加群構造を導入する、という試みについてはM.Guest氏、A.L.Mare氏と共同研究を行ない、進行中である。 A型の無限次元旗多様体の場合に、次数2のコホモロジー元が生成する部分代数よりもより小さい空間に制限するとよいという観察を得たが、その先について、とくにこの現象の幾何学的理解は上記の基礎付けの問題とも絡むと思われ、引き続き研究中である。
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