研究概要 |
非交叉条件のもとでのN本の単純ランダムウォークは,vicious walkersとよばれる確率過程である.vicious walkersに対する中心極限定理を考えると,非交叉条件を与える時間をスケーリングに対してどの様に与えるかにより,時間的に斉次と非斉次な非衝突ブラウン運動が得られる.斉次的非衝突ブラウン運動はDyson Brownian motionと呼ばれているものであり,ブラウン運動を成分とする行列値過程の固有値と同分布であることが知られている.一方、非斉次的非衝突ブラウン運動はブラウン運動とブラウン橋を成分とする行列値過程の固有値と一致しており,Harish-Chandra公式と密接な関係があることが証明された.(Stoch.Stoch-Rep.Vol.75,Elect.Comm.Probab.Vol.8).この非衝突ブラウン運動の相関関数は,斉次的な場合は行列式で,非斉次的な場合はパフィアンで表現できる.この結果を用いて,粒子数Nを無限に大きくしていくときの相関関数の漸近挙動を調べることができ,その結果,極限で得られる無限粒子系の性質を調べることができた.(Adv.Stud.Pure Math.Vol.39). 彷復過程は,二つの母数(ν,κ)をもつ拡散過程であり、とくに、ν=1/2,κ=1のときはブラウンミアンダーと呼ばれている.非衝突条件のもとでのN本の独立な彷復過程を考えると,特別な場合としてカイラル・ランダム行列やAltland-ZirnbauerのBogoliubov-de Gennes型ランダム行列の固有値分布を粒子分布として実現するなどの関係があることが示された.(Journal of Mathematical physics Vol.45)これらの非衝突彷裡過程の相関関数はパフィアンで表すことができ,粒子数を無限大にした熱力学的極限での相関関数を厳密に求め,それらが一般に分数微積分を使って表せることを発見した.極限として得られた確率過程は相互作用を無限粒子系であるが,この無限粒子系の性質についても調べた.(Probability Theory and Related Fields Vol.133)
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