研究概要 |
当初の計画では,直交配列を用いて非素数べき位数の有限射影平面を調べたいというもくろみがあったが,直交配列に含まれる概念である対称横断デザインを用いた方が扱い易いことに気づいた。その兆候は位数16の自己同型群を持つ位数12の射影平面の非存在を証明した論文の中にもあった。それ以後,興味はブロックサイズ12の対称横断デザインの解明に興味が移った。上記の論文で本質的に証明されたことは,あるタイプの位数8の自己同型群を持つ対称横断デザインSTD_2[12;6]が存在しないということである。しかも,$STD_1[12;12]$は位数12の射影平面と同値な概念である。グループサイズ12の対称横断デザインたちは相互に関連しあった仲間であるので,STD_6[12;2],STD_4[12;3],STD_3[12;4]も分類すべきだと考えた。STD_6[12;2]は位数12のHadamard行列と同値な概念であり,完全に調べられている。STD_4[12;3]は同型を無視すると1個しかないこと,またその全自己同型群がpoint groups上とblock groups上に可移に作用がわかった。STD_3[12;4]については,位数2のgeneralized elationの存在を仮定して完全に分類した。非同型なものの個数は2であるが,全自己同型群はもはやpoint groups上可移ではない。面白いのはこの2つの対称横断デザインがSTD_6[12;2]を拡大して得られ,自己同型たちも部分的に受け継いでいるという点である。一方,秋山献之氏の援助も得てグループサイズ3の対称横断デザインでpoint groupsの上とblock groupsの上に正則に作用する自己同型群を持つ対称横断デザインの研究をした。この中で,新しい(21,3,21,7)-semiregular relative difference setも発見した。現在興味は,ブロックサイズを固定したとき,対称横断デザインの縮小・拡大問題に移っている。
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