研究概要 |
15,16年度本科学研究費で以下の4つの研究を行った. 1.双曲型平衡点の近傍における超局所特異性の伝播の研究(J.-F.Bony, T.Ramond, M.Zerzeriとの共同研究) 2.島の中の井戸型ポテンシャルが生成するレゾナンスの虚部の研究(A.L.Benbernou, A.Martinezとの共同研究) 3.2次元2レベルシュレディンガー作用素の錐状交叉モデルの研究(C.Lasser, L.Nedelecとの共同研究). 4.一階常微分方程式系に対する完全WKB法の理論の研究(L.Nedelecとの共同研究). 1は,ハミルトニアンの双曲型平衡点に附随する安定多様体上の超局所特異性が不安定多様体に伝搬するかと言う問題である.この問題を,解析関数および滑らかな関数の範疇で解いた. この結果については,共同研究者のJ.-F.Bonyがパリの研究集会で発表した. 2の問題は,ポテンシャルが解析的な場合の既知の結果(Helffer-Sj"ostrand)を,滑らかなポテンシャルの場合に拡張したものである.島の境界にはcausticsが現れるが,ここで解をAiry型の積分で表示し,相関数,振幅関数を概解析拡張を用いて複素空間に拡張することにより,WKB解をcausticsを超えて接続することに成功した. 3は,ポテンシャルの固有値が錐状交叉する2次元シュレディンガー作用素のモデルについて,レゾナンスの量子化条件を求める問題である.一次元に帰着し,完全WKB法を適用することにより解決した.この結果は現在論文として執筆中である. 4は3で用いた手法を一般化したものである.シュレディンガー方程式に対して構築された完全WKB法の理論を一階の常微分方程式系に拡張し,さらに確定特異点の近傍でのWKB階の構成方法およびその接続を研究した.この結果は6月に京都大学で行われた国際研究集会で発表した.現在論文として執筆中である.
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