研究概要 |
研究課題に関する当該研究期間(平成15年〜平成16年)における研究成果の概要は,次の通りであり,成果は学術雑誌等に発表された. 研究代表者勘甚は,解析関数の作る古典的なハーディー空間に対して成り立つ,いわゆるハーディーの不等式を,ヤコビ多項式の作る直交系に対して証明した.証明の鍵は,近時調和解析において得られた,実ハーディー空間のアトム分解である.この事実によって,これまで複素解析的手法によって証明されていた定理が実解析的手法で解析出来るようになった.我々は,この考えを直交関数系の調和解析に有効と見て取り前述の定理を得た.さらに,ハンケル変換に関する移植定理を実ハーディー空間において示すことに成功した.移植定理とは二つの直交系を考えたとき,おのおのの直交系における展開が,考えている空間のノルムに関して同値であることを主張する定理で,直交展開の調和解析における有効な道具である.ハンケル変換とは,その特殊な場合としてフーリエ変換を含む有用な積分変換である.実ハーディー空間における作用素の評価は,補間によって,ルベーグ空間における対応する評価を導く.我々は,これら有用な枠組みにおいて,移植定理を得たものである. また,研究分担者は各々の立場から以下の成果を得た.土谷は,ヴェンチェルの境界条件を持つ拡散方程式の基本解を構成した.一瀬は,非可換調和振動子に対するゼータ関数が全複素平面に有理型関数として解析接続できることを示した.佐藤は,A.Vargasの斉次核に対する結果を3次元以上のユークリッド空間に拡張した.藤解は,Cartanの第二主要定理について極値的な例を構成し,あるFermat型の関数方程式に対する有理型関数解の存在との関連について調べ特別な解を見出した.
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