研究概要 |
1.指数型可解リー群の既約ユニタリ表現は,orbit methodにより,ある連結部分群のユニタリ指標からの誘導表現としてユークリッド空間と微分同相な等質空間上のL^2関数の空間に実現できる.対象が冪零リー群の場合,この標準的な実現において,表現空間のC^∞ベクトル(無限回可微分ベクトル)の空間はSchwartz関数の空間と一致し,群の非可換フーリエ変換の記述とも協調することが知られている.一方,一般の指数型可解リー群の場合は,C^∞ベクトルの具体的な記述は困難であり,フーリエ変換ともうまく連携しない.本研究では,J.Ludwig氏(Metz大学,フランス)との共同研究により,一般の指数型可解リー群を対象に,C^∞ベクトルのある部分空間に注目した構造解析において以下の成果を得た:対象とする群のリー環の導来イデアルを含む冪零イデアルを1つ定めておき,このイデアルに適合する実polarizationを経由して,群の各既約表現を等質空間上のL^2関数の空間に実現する.このとき,このイデアルに付随し,自然な対称性のある「急減少性の条件」を満たす関数から成る部分空間を調べた.この空間を,対象の群を部分群に含むある群の既約表現の表現空間にC^∞ベクトルの空間として埋め込むことが出来るという結果を得,さらにその群の構成法を与えた.次に,既約表現が引き起こす群上のフーリエ変換のうちランク有限の作用素の像から成るある空間をこの空間を用いて記述した.その他,指数型リー群の表現のうち特別な場合にC^∞ベクトルの具体的な記述を得た.これらの結果は現在点検を行い論文にまとめた(投稿準備中). 2.一般化された複素解析的誘導表現については,低次元の指数型リー群を対象に,新たな幾つかの例において表現の構成に関わる相対不変ベクトル等を調べた.これらは個々の群の構造の特殊性を用いており,一般的な記述の方法を見いだすことは今後の課題である.
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