研究概要 |
本研究課題は,複素平面上の単位円板における解析関数空間を定義域とする線形作用素が持つ関数解析的性質を,その定義域に属する解析関数の持つ関数論的性質で特徴付けることを目的とする.得られた知見について,各課題にしたがって以下まとめる.[1]大野のLipschitz空間上の荷重合成作用素の研究の拡張に端を発したBloch-type空間上の間題は,K.Stroethoff(米Montana大学),R.Zhao(米Toledo大学)らとその有界性,compact性の特徴付けを完全に行い,論文として発行した.[2]J.S.Choa(韓Sung Kyun Kwan大学)と合成作用素と乗法作用素の積の有界性,compact性の特徴づけをHardy空間とBergman空間の場合で同時に示し,論文として発行した.[3]新潟大学理学部の泉池敬司との共同研究「有界解析関数空間上の荷重合成作用素の位相構造」において豊富な結果を得た.これは先駈けとなった大野の「荷重」のない「合成作用素」の場合の拡張であるが,まず荷重合成作用素の差のcompactness, weak compactness, complete continuityの同値性が確認された.そして,位相構造については,荷重にあたる関数が絶対値1をとる集合による場合分けにより考察した.得られた結果は泉池敬司,新潟大学理学部の細川卓也との共著論文として投稿し,受理された.大野の結果は関数環の研究者によって拡張されているが,この場合も新たな問題を提起するものと思われる.[4]有界調和関数空間上のHankel-type作用素のcompact性,完全連続性も泉池教授との共同研究によって明らかにし,論文として投稿し受理された.この研究はDunford-Pettis性質,tight環,Bourgain環に関係するなど重要な応用面を多く持っている.[5]大野の研究「有界解析関数空間上の合成作用素の位相構造」について,新潟大学理学部の細川卓也よりBloch空間への拡張が提起され,氏と共に研究を試み,合成作用素の差のcompactnessを完全に特徴付けた.その特徴付けがSchwartz-Pick型の不等式が道具になったことから,いろいろな話題との関係が予想される.論文として投稿した.
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