研究概要 |
無限次元空間内の領域上の、正規化された正則写像について、増大度定理と同様な評価が成立する条件を研究し、写像による像に条件を付加することにより、増大度定理の精密化を研究し、次のような結果を得た。 まず、1次元の複素平面内の円板上の非負値調和関数について知られているハルナックの不等式に注目し、それを拡張して、複素バナッハ空間内の領域上での評価を検討し、ハルナックタイプの評価式を得た。 さらに、適当な線形汎函数を選び、f(e^<2π√<-1>k>z)=e^<2π√<-1>k>f(z)が成立するときの評価式が得られた。 次に、(E,‖・‖)を無限次元バナッハ空間とし、Bをそのノルム‖・‖に関する単位開球とする。さらに、kを自然数とし、正則写像f:B→Eは、次の条件を満たすとする。 (1)fは、h=h(v,t)を補助写像とする媒介変数表現f(z,f)を持つ。 (2)e^M-t>f(z,t)-zは、z=0を(k+1)位の零点に持つ。 このとき、適当な線形汎関数ψ:E→Cに対し、評価式 ‖z‖=(1-‖z‖^k)/(1+‖z‖^k)【less than or equal】Reψ(h((z,t))【less than or equal】‖z‖=(1+‖z‖^k)/(1-‖z‖^k) が成立する。また、この評価式を適切な測度を用いて計算することにより、評価式 ‖z‖/(1+‖z‖^k)^<2/k>【less than or equal】‖e^<-t>f(z,t)‖【approximately equal】‖z‖/(1-‖z‖^k)^<2/k> が成り立っことを示した。 その他、f(・t)に対する増大度定理や被覆定理を証明し、さらに、これらの条件を満たす写像の例として、星型写像や凸写像について考察した。また、Taylor展開したときの係数の有界性題やフレンケルの補題についても研究し、その結果を公表した。
|