研究概要 |
超新星爆発直後の,生まれたばかりの熱い中性子星の内部では,ニュートリノ(ν)のトラッピング現象のためにエントロピーがほぼ一定で大きく,高温で高密度の物質(超新星物質)が形成される。この超新星物質における構成粒子の混在度は,次のような特徴を持つことが分かった。 (1)レプトン数保存のため電子の混在度が大きくなり,その値は密度の変化に依らずほぼ一定である。電子ニュートリノの混在度は電子の混在度に比べてずっと小さい。 (2)電子の混在度が大きくなるため、電荷保存により陽子の混在度も大きくなる。 (3)レプトン数保存のため,高密度領域でのΣ^-の混在が大きく抑制される。これは,Σ^-の混在を決める化学平衡の条件式中で,ν_eの化学ポテンシァルがΣ^-の質量の役割を果たすからである。ΛについてはΣ^-のような大きな変化はみられない。 この超新星物質の状態方程式を用いて中性子星モデルの計算を実行し,以下の結果を得た。 (1)状態方程式の硬化のために,誕生時の中性子星の最大質量が太陽質量の1.84倍となり,冷えた中性子星物質の状態方程式から得られる最大質量(太陽質量の1.82倍)よりも大きくなる。 (2)誕生時の熱い中性子星が冷えていく段階では,バリオン数が保存されるために,冷えた中性子星の最大質量は中性子物質の状態方程式から予想される最大質量よりも小さくなり,太陽質量の(1.75-1.79)倍へと減少する。 (3)中性子星内部の密度分布は,冷えるとともに中心付近が平坦になり,表面付近で急激に減少するようになる。この傾向は,冷えるにつれて中心密度が上昇して半径が縮むという変化をもたらすハイペロンを含まない場合と対照的である。中性子星内部の粒子構成も,冷えるにつれて,中心部での陽子の混在度が減少し,Σ^-粒子の混在度が増加する。
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