研究概要 |
本研究は、中性子ドリップライン近傍核の陽子非弾性散乱の実験によって核変形度を求め、極限中性子過剰核における核変形・密度分布、魔法数の消失や新魔法数に代表される殻構造の変容、クラスター構造との関連性等を調べることを目的として行われた。非弾性散乱によって主として第一2^+準位を励起し、そのエネルギー、スピン・パリティ、遷移強度、核変形度を導き出した。実験では逆運動学での陽子非弾性散乱を主として測定するため、前方放出粒子について高い角度分解能が要求される。我々は本研究で新たに多重粒子測定用ドリフトチェンバーを開発し、これを利用することにより高い確度で移行核運動量を決定できるようになり、また粒子識別能力も格段に向上した。 実験は理化学研究所の不安定核ビームラインを用いて行われ、^<11,14>Be,^<18,19>C,^<15,17>Bなどのドリップライン近傍核について、陽子および^<12>C標的による非弾性散乱を行い、束縛準位についてはインビームガンマ法を用い、非束縛準位については不変質量法を用いてエネルギースペクトルおよび散乱角度分布を導出した。その結果、^<17>B,^<14>Beといった中性子ハロー構造を持っており注目されながら、これまで励起準位が1つも知られていなかったドリップライン核について、第一励起準位の発見に成功した。これらの準位についてはその生成断面積、角度分布から変形度や核スピンも決定した。この結果^<17>B,^<14>Beについて、異常な有効電荷、変形性が示唆されている。その他の核についても新しい準位の発見や遷移確率の導出が行われ、この領域での変形の様子が明らかにされつつある。 今後の展開としては、アイソスカラー標的として理想的なアルファ標的による非弾性散乱との比較から、陽子分布、中性子分布の独立決定を行うことを目指している。これにより中性子過剰領域特有の2フェルミ流体の独立した励起モードなどの新しい多体系のダイナミクスへと繋がる可能性がある。
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