研究概要 |
当該科研費による平成15年度〜17年度の期間における研究により得たれた主要な成果は次の通りである. 1.静的高次元ブラックホールの摂動論:宇宙項をもつ任意次元のEinstein-Maxwell系において,一般化された静的ブラックホール解の摂動方程式が,互いに分離したSchrodinger型2階常微分方程式(マスター方程式)の系と同等であることをゲージ不変な定式化を用いて示し,対応する有効ポテンシャルおよび源項の具体的表式を世界で初めて与えた.さらに,この定式化を用いて,任意次元のSchwarzschildブラックホール,宇宙項がゼロ以上で4次元および5次元の電荷をもつブラックホールが摂動的に安定であることを証明した. 2.高次元ブラックホールの摂動的一意性:漸近的de Sitter4次元正則ブラックホール解,任意次元の漸近的平坦および漸近的反de Sitter正則ブラックホール解が,静的極限の近傍で球対称解およびそれに回転を加えた解に限られること(摂動的一意性定理)を示した. 3.フラックスコンパクト化の安定性:IIB型超重力理論におけるフラックスコンパクト化により得られるワープした超対称定常解が,フラックスや内部空間の構造の詳細によらず,常に不安定であること,また,その不安定性はサイズモジュラスに対して加法的に発現することを一般的に示した. 4.ワープしたコンパクト化の4次元有効理論:IIB型超重力理論およびヘテロ型M理論におけるフラックスコンパクト化に関して,内部空間のサイズモジュラスと4次元時空計量に対する,ワープを考慮した4次元有効理論を世界で初めて導いた.それを用いて,4次元有効理論が元々の高次元理論から得られるものより広い解を許容することを指摘した. 5.M理論における光的厳密解:11次元超重力理論における光的な厳密解のある一般的なクラスを求めた.この解は,一般に1個以上の1変数任意関数を含んでおり,これを適当に取ると,2つの異なる漸近的平坦領域をつなぐ時空が得られ,そのトーラスコンパクト化によりコンパクト化の動的な変化を研究するのに利用できる可能性があることを指摘した.
|